冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
つらつらとそんなことを考えているうちに、車は瑠依と一緒に暮らすマンションへと着いた。
何度かけても瑠依が電話に出ることがなかったせいで、こんな遅くまで一体どこにいるんだと不安な気持ちのまま車を降り、足早にエレベーターに乗り込んだ。
瑠依の居所がいつでもわかるように、彼女が愛用しているネックレスにGPSでもつけるか。
瑠依が俺と結婚すれば、彼女への危険が更に増えるのは確実なのだから。
自分の思いつきを正当化するような理由を並べながら、ようやく着いた我が家。
玄関のドアを開けて、その向こうに広がるはずの暗闇を想像しながら足を踏み入れると、予想外に明るいリビングが見えた。
「瑠依、いるのか?」
大きな声でそう叫んでも、部屋からは何の答えもない。
何かあったのかと慌てて靴を脱ぎ、リビングに駆け込むと。
「は?おい……。襲って欲しいのかよ」
新しいソファに体を丸めた格好で眠る瑠依がいた。
彼女からは、お気に入りだというローズ系の香りが漂っている。
ボディソープやシャンプー、ほとんどの香りはローズ系に決めているらしい。
瑠依から漂うその香りに引き寄せられるように、ソファの横に跪いた。
瑠依に何事もなかったことにほっと息をつき、その寝顔をじっと見つめる。