冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「似合う、かな」
ぽつりと呟いた言葉の中に込めたのは、紬さんにどう思われるだろうか、ってこと。
結婚式という、二人の門出の日なのだから、これまでとは違う自分を見せて、喜んでもらえれば、嬉しい。
そう考えながら、ワンピースを体に当てて、悩んでいると。
「さ、試着してみましょうね」
店員さんが優しい声で促してくれ、私はほんの少しの緊張感と共に、試着室へとついていった。
そっと彩也子さんを振り返ると、頬を緩め、嬉しそうに笑っている。
「写真もいっぱい撮って、紬さんに送ってあげましょうね。……あ、社長にも、送らないと拗ねますね」
ふふっと笑う彼女につられて私も小さく笑い、弾む足取りで試着室に向かった。