冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




大きなガラス窓から差し込む光が、店内をはっきりと見せてくれる。

雑誌の特集で見たことがあるそのカフェはかなり広くて、私が窓越しに覗いている場所からは遠いけれど、お店の中央の丸テーブルに座っているのは紬さんに違いない。

手元のタブレットを見ながら嬉しそうに笑っている。

声は聞こえないけれど、タブレットから視線を外さないまま何かを呟き、向かいに座っている女性に時折視線を投げる。

その瞳はとても柔らかくて、楽しげだ。

タブレットを指で操作しながら、何かを順番に見ているようだけど、向かいの女性もその画面を覗き込んではふたりで微笑んでいる。

女性が紬さんに身を寄せて何かを呟き、それに照れたように紬さんが頬を緩めた。

そして、握りこぶしで女性の頭を軽く叩くと、二人で顔を見合わせてはくすくすと笑っている……ように見える。


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