冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



すると、紬さんは私を安心させるように背中をするりと撫でた。

一緒に暮らすようになってから何度も感じる、この優しい指先を信じたくなるけれど、それでもこの状況を警戒する気持ちは強くて、切ない。

私の心細い気持ちに気づいていないのか、紬さんは相変わらずの飄々とした声で話し続ける。

「理美の口の悪さはぴかいちだけど、あれでも根は優しいやつなんだ。瑠依のこともかなり気にしているし、仲良くしてやってくれ。
お見合いの日のあの失礼な態度も謝りたいってさ」

「え、えっと……?」

「確かに勝気でわがままなところもあるけど、あいつの境遇を考えると、そうやって強い自分を作らないとだめだっていうのもわかるんだ」

「そ、そうなんだ……」

「誤解もされやすいし。瑠依よりも年下だなんて見えないだろ」

「年下?」







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