冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
けれど。
たとえ政略結婚だとしても、私は紬さんの嫁だ。
嫁に、愛人ともいうべき理美さんを紹介するなんてどういうつもりだ?
私にはそれを受け入れる義務でもあると思っているのだろうか?
相変わらず軽快に歩く紬さんの横顔を見上げていると、次第にいらいらしてくる。
小さな頃からと言っていたけれど、それほど付き合いが長いのなら、私とお見合いする前にとっとと理美さんと結婚していれば良かったのに。
そうすれば、好きでもない私と結婚することもなかったし、抱くこともなかったのに。
……ばかみたい。
私一人が紬さんに気持ちを傾けて、心を寄せて。
好きだと感じながら、そして抱かれて。
本当に、私はばかだ。
理美さんが待っているカフェに向かって引きずられて歩きながら、それに逆らう気力もないほど落ち込んでいく。