冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
私は、あまりにも可愛らしいデザインとシルエットに躊躇しながらも、身に着けてみると意外に着心地が良い事に驚いた。
それに、紬さん好みらしいワンピースがかなり似合っているとおだてられて嬉しかったのも事実で。
写真の中の私は、照れながらも、表情は明るく柔らかい。
私、こんなに嬉しそうに笑っていたんだ。
「ホント、何枚撮ったの?よっぽどこの服が気に入ったんだろうけど……まあ、かわいいから紬が撃沈されるのもわかるけどねー」
理美さんは、わざとらしく大きく息を吐くと、私と紬さんを交互に見る。
「新婚さんにあてられるのは面倒だから、さ、早く話を済ませましょ」
「え?話って」
「あら?さっき私と紬を見かけて逃げ出したのは、私のことを誤解したからでしょ?それに、あのお見合いの時のこと、聞きたくないの?」
理美さんは、そう言って席に着いた。
話って一体なんだろう?
紬さんに視線を向けると、「悪い。もう少しこいつに付き合ってやって」と力なく呟き、理美さんの向かいに座った。
そして、隣の椅子を引いてくれた。
訳がわからないまま腰掛け、首を傾げていると、じっと私を見ていた理美さんが呟いた。
「入籍も済ませた今になって言っても仕方がないけど。紬なんかより、うちの修ちゃんの方が絶対いい男なのに」
「修ちゃん?」
「そう。私の大切な大切な弟の修ちゃん。見た目も将来性も、女への誠実さも紬よりも格段に上等な男なのよ」