冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
私の頬にあった手は、いつの間にか私の手を握りしめていて、ぎゅっと熱が注がれる。
いつの間にか並んだ椅子の距離が近づき、両手は拘束されたまま。
向かい合った私たちはお互いを見つめ合い……。
惹かれあうようにお互いの顔を寄せ合い、そして……。
「あのさあ、そういうのは家に帰ってから存分にやってよね」
呆れた声が聞こえてはっと視線を向けると、理美さんが、紬さんと私を睨んでいた。
「とっくに入籍も済ませて甘い時間を過ごしているんでしょ?今更、人前でデレデレするなんてやめてよね。っていうか、とっくに気持ちが通じ合っているなら、私の出番はないじゃない」
はあ、と大きなため息を吐いて、理美さんはタブレットを私の目の前に置く。
そこには、ウェディングドレスの試着をしていた時の私。