冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



紬さん好みの可愛らしくごてごてとしたデザインのドレスを着た私は疲れていて、笑顔もどこか嘘っぽいけれど。

照れながら細めた目元は嬉しそうで、口角も上がっている。

「この写真を見れば、紬だけでなく瑠依ちゃんだってこの結婚を楽しみにしているって、よーくわかるわよ」

「あ……はい」

写真の中の私。

あの時、確かに疲れていたけれど、スマートフォンで何枚も写真を撮っている紬さんの嬉しそうな様子を目の前にして幸せな気持ちになった。

結婚に二の足を踏んでいた私が少しでも心穏やかになるよう、そして自分を信じてくれるようにと、照れくさくなる言葉ばかりを並べて私の写真を撮っていた紬さん。

私も、口では面倒くさいだとか、ドレスなんてどれでもいい、とか言いながら、本当は、私を誉めてくれる紬さんが愛しかった。

幸せすぎて崩れそうになる表情を見せないよう必死だった。



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