冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
ドレスなんてどれでもいいっていうのは、紬さんが気に入ったものならどれでもいいという意味で、まるで女子高生のような淡い想いを見透かされないための言葉。
好きな人の思いどおりの色に染めて欲しいと願うのは、大人の女にしては重すぎる思いなのではないかと感じていた。
それに、あの時は紬さんの気持ちがはっきりとわからなかった。
けれど、写真の中の私はどう見ても嬉しそうで、紬さんとの結婚式を心待ちにしていると簡単にわかる。
そうか……私、こんなに結婚式を楽しみにしているんだ。
「瑠依ちゃんのこの写真を見て、ちょっと安心した」
私の手を握ったまま、尚も体を寄せようとする紬さんを無視して、理美さんは私に呟いた。
「おばあ様と瑠依ちゃんのおじい様の初恋成就の為なら、同じ孫なんだから修ちゃんでもいいのにって思っていたけど、瑠依ちゃんがこんなに幸せそうに笑えるなら、紬に任せる。
……瑠依ちゃんが、それを望んでいるようだしね」
「あ、あの、修ちゃんって一体だれですか?」
理美さんの口から何度も出るその名前に心当たりはない。
紬さんの代わりにと言われても、答えようもない。
第一、紬さんの代わりになれる人がいるとも思えない。