冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
ここに来て、はや15分。
私が来ることをあらかじめ予想していたのか、驚くこともなくさらりと受け答えを続ける姿を目の前にして、疲ればかりが増していく。
私のお見合いをおじい様が仕組んだことはとっくに知っていたけれど、今日の今日まで私と会おうとせず、私がお見合いに行かざるを得ないようにするなんて思ってもみなかった。
私と江坂さんのお見合いの真実。
おじい様が結婚前に愛し合っていた女性の孫である江坂さんと私を結婚させるための、お見合い。
個人の思いよりも家同士の繋がりが重視された古き時代、おじい様はその犠牲となり大切な女性と結婚することができなかったらしい。
20代前半の感情豊かな頃、愛する人との別れはおじい様にとっては死ぬほどつらい事だった。
おじい様の政略結婚が決まり、いよいよ結婚式を翌日に控えた日、
『せめて孫の代で私たちの縁をつなげよう』
悲しみのあまりお互いが命を絶つという選択をしないよう、見えない将来への微かな希望を約束し、別れたという。
その後、おじい様は私のおばあ様と結婚し、泣く泣く別れた恋人も別の男性と結婚した。