冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
理美さんは首を傾げ、綺麗な顔が更に綺麗に見える笑顔でちらりと紬さんを見る。
すると、紬さんは私の肩に手を回し、そのまま私の頭を自分の肩に乗せた。
ただでさえ混み合う店内。
周囲からの視線が気になって焦りながらも私は拒むことなくそれに素直に従った。
私の耳を撫でる紬さんの指先に心地よさを覚えて、ふわりと気持ちが浮きあがる。
「瑠依はもう俺の嫁さんだ。修でも誰でも、譲るわけないだろ。たとえ今瑠依と籍を入れてなくても、同じだ。手放すわけがない」
「つ、紬さん」
吐息が耳元にかかるほどの近い距離で、こんなに甘い言葉を落とされるなんて、予想もしていなかった。
紬さんがあらゆることに対して強引だということはわかっていたはずなのに、まだ覚悟が足りなかったのか、大きく跳ねる鼓動をどうやって鎮めればいいのか、わからない。
熱くなった頬に、紬さんの指がすっと掠める。
「紬さん?」
視線を移すと、紬さんが呆れた表情で理美さんを見ていた。
「理美がさっき言っていたけど、ウェディングドレス姿の瑠依は本当に嬉しそうだろ?
俺との結婚を待ち焦がれてるって思うだろ?
瑠依のことをずっと気にかけていたのはわかるけど、修と結婚させようと画策するのは打ち止めだ。諦めろ」
紬さんが、私を抱き寄せていない手でタブレットを取り上げた。