冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
けれど、お見合いの場に突然飛び込んできて、私と紬さんの結婚に反対した理美さんの存在は大きかった。
実際にその姿を目にすると彼女の本気が伝わってきて、私は紬さんと結婚してもいいのだろうかと考えずにはいられなかった。
そう思いながらも結局は紬さんとの結婚話を進め、既に入籍を済ませているのだから、私は心から紬さんと結婚したかったのだと思う。
それに、そうでなければこれほど疲れ果てるまで、ドレスを試着するなんてことしないはずだ。
「それにしても……こんなに綺麗なドレスを着ても、私、全然かわいくない」
タブレットを覗き込みながら、ぽつりと呟いた。
何度も試着させられたおかげで疲れ果て、とりあえずアップにまとめてもらった髪も崩れている。
「そうか? かなり疲れているのに、俺との結婚式の為に一生懸命似合うドレスを探してくれているのがわかるし、かなりいい女に見えるけど?」
「え? この写真のどこがいい女?」
紬さんの甘い戯言にうんざりした声を返した。
すると、紬さんは即座に反応し、あっさりとその答えを口にし始める。
「どこがって聞かれたから言うけど、鎖骨のラインなんて思わずかみつきたいほど綺麗だし、きゅっとしまったウェストは俺の腕で支えてやりたくなる。疲れてほんの少し開いた唇は俺の唇で塞いでやりたいし、儚げなうなじを見たらもう」
「も、もう、いいから。それ以上、何も言わなくていいって」
焦る私とは対照的に、紬さんはさらりと笑顔を見せ、私を見つめる。