冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




そして月日は流れ、私が生まれ、おじい様の恋人だった人の孫として江坂紬さんが生まれた。

おじい様と紬さんのおばあ様は、それぞれ伴侶と死別し、最近になってようやく再会した。

お互いの状況を語り合い、ようやく昔年の思いを叶えようと企んだ。

孫同士を結婚させよう。

……なんてセンチメンタル。

そして、なんて迷惑な二人。

お互いの恋心を成就するために私と紬さんを結婚させようとするなんて、ありえない。

それに、初恋の思い出なんて、美化されて綺麗なものとして残っているに違いないのに。

「じいちゃんの願いを叶えてくれよ」

「そんな弱々しい声で頼まれても、嘘泣きされてもだめだからね。私はあんな軽い人となんて絶対結婚しません。結婚したら浮気の心配ばかりで大変なのは目に見えているし、やだ」

「あ、その『やだ』ってじいちゃんの萌えポイントだな。かわいいぞ。もっかい言ってくれよ」

「……おじい様、そろそろ私の怒りの沸点が見えるんですけど?」



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