冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
……羨ましい。
ぽつり、そう思った自分に苦笑しつつ、そんな感情を抱く私を許すように、紬さんは頬を撫でてくれた。
侑平さんは、いつも忙しいご両親から愛情や時間を注いでもらえなかった幼い頃の寂しさを理由に、今の仕事を始めた。
自分の父親の仕事を否定するわけではないにしても、自分の子供には、寂しい思いを味あわせたくはなかった。
そんな感傷的な理由を、理美さんは「うちの父親って、寂しがり屋で優しすぎるのよね。母親を溺愛しているし、私と修にも口うるさいし」と一蹴していた。
理美さんの口調は誇らしげで嬉しそうだったけれど、あえてそのことは口に出さなかった。
理美さんはきっと、照れて真っ赤な顔でそれを否定するに違いないし。