冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




侑平さんは、幼稚園の園長としての才能を発揮し、当時保母さんだった涼子さんと結婚。

その涼子さんは理美さんと修さんのお母さんだ。

今では夫婦そろって、幼稚園で小さな子供たちと一緒に泥んこになって過ごしているという。

理美さんと修さんは、そんなご両親から可愛がられ、愛情を注がれながら育ったけれど、唯一、家族みんなから心配されていたのが修さんの喘息だった。

大人になった今では喘息もおさまり元気に過ごしているけれど、小さな頃は時折激しい発作に見舞われ病院に運ばれることもあったらしい。

その度、修さんを心配する理美さんが付き添い、励ましていた。

そんなある日、修さんに発作がおき、父親の車で主治医のいる病院につれて行った時、たまたま知り合いの姿を見かけた。

救急隊員に付き添われる小さな女の子を心配そうに見つめている女性。

理美さんはその女性から目が離せなかった。

『彩也子さんだ』

タンカに乗せられて運ばれる女の子の手を握りしめ、声をかけている。

『じいちゃんの会社に行った時、何度か会ったことがある』

『じいちゃんのお友達の会社の人って言っていたけれど、あんなに泣きそうな顔を見たのは初めてだ』

小児科に運びこまれた女の子は、青白い顔色でぐったりとしていた。




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