冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
『瑠依ちゃんのおじいちゃんはいくらくれるのかなあ』
その時、ニヤニヤ笑いながら話す男たちに掴まれた腕が痛くてたまらなかった。
屋上駐車場に無理矢理連れて行かれた私は、必死で逃げようと暴れた。
けれど、子供の私が大人の力に敵うわけもなく、男に担ぎ上げられ、車に無理矢理押し込められそうになった。
その時、身代金目的の誘拐だということは理解できていたし、おじい様からその危険についてはいつも聞かされていた。
私の立場を考えれば、お金目当ての誘拐に巻き込まれる可能性は高い。
そんな現実をふまえ、おじい様は私の警護にはかなり神経質になっていた。
けれど、子供の私はおじい様の気持ちも、自分の立場もしっかりと理解していなかった。
二十四時間体制の警護をつけようとするおじい様に『怖い顔のおじちゃんがずっと側にいるのはいやだ』とだだをこねて、塾の送迎の警護はやめてもらい、彩也子さんと一緒に通っていた。
その結果。
私の甘さが招いた誘拐未遂事件。
このまま私はどこかに連れて行かれるんだ。
そんなの嫌だ、と最後の力を振り絞って暴れ続けていた、その時。
車に押し込められそうになった私は、間一髪で助けられた。
エレベーターからはじき出された彩也子さんが、急いでビルの警備室に電話し、ちょうど各階を巡回中だった警備員たちが飛び込んできたのだ。