冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
何を言っても私の言葉を聞き流しふざけた受け答えしかしてくれないおじい様に、私はイライラと顔を歪める。
もともと自分の意志を貫く頑固者、まあ、そうでなくては「葉月王国」と呼ばれる企業グループのトップに立つことは無理だったんだろうけれど。
小さな頃からその頑固さに慣れてはいても、辟易してしまう。
私は大きくため息を吐き、おじい様が座っているソファの横に勢いよく腰かけた。
恰幅のいいおじい様は、茶色のスーツが良く似合い、忙しい毎日にも関わらずその肌はつやつやだ。
目の力も強くて、会社を大きくしてきた自信と余裕に満ちている。
ふとネクタイに目が行くと、それは私がおじい様の誕生日にプレゼントしたもの。
それも、10年以上も前にプレゼントしたものなのに今でも染みひとつなくきれいなままだ。
ネクタイ専門のクリーニングに出して丁寧に使っていると言っていたのは嘘じゃないんだなと思い、ほんの少しだけ気持ちが緩む。
これだけでなく、私からのプレゼントは全て大切に保管してくれていると聞く。
それこそ幼稚園の頃に落書きした画用紙一枚、捨てることなく大切に。