冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う

釈然としない思いで考え込む私に、紬さんはぽつりと呟いた。

「理美は、自分が江坂に必要な人間だとは思っていないんだ」

低く唸るような声に視線を向けると。

「理美は、自分が園部理美だということを、必要以上に重く受け止めているんだ」

「……園部理美」

「自分の両親が亡くならなければ、修と出会う事もなかったかもしれないし、経済的に満たされた人生を送ることもなかったに違いない。
赤の他人である自分を育ててもらえただけでもありがたいのに、これ以上欲しいものを手にして、侑平さんや修の人生をわずらわせたくないんじゃないかな。
……そんな考え、つまらないと思うけど」

「つまらなくないよ」

「え？」

「つまらなくなんか、ない」

思いがけず、強い口調で言葉を続けた。