冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「ちゃんと、聞こえてるじゃない……ばか」
拗ねた声で答えた私に、更に嬉しそうな声をあげた紬さんは、
「俺の奥さんって意外と頼りになるらしいけど。予想通りなのは、照れ屋で恥ずかしがり屋さんだってことだな」
空いている大通りを、車はするすると走り抜けていく。
そして、気付いた……きっと、紬さんだって照れているんだ。
紬さんの後頭部から数センチ視線をずらすと、大通りの街灯に照らされた彼の耳が赤く見えたのは、気のせいじゃない。
きっと、私と同じくらい、照れているに違いない。
なんだ、私と一緒だ。