冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
それに。
母さんだけではなく、私だって不安定な父さんを支えることはできなかった。
唯一の家族となった私が、父さんに寄り添い励まし、おじい様の後継者としての道筋をつける手助けができていれば、父さんが心を壊すこともなかったかもしれない。
私が父さんにもっと優しくしていれば、父さんはたとえ後継者になれなくても幸せに過ごしていたかもしれない。
娘の成長を楽しみにしながら、人生を明るく過ごせたかもしれないのに。
私は自分の幸せばかりを考えて、父さんの苦しみを見過ごしていた。
ううん、見ないようにしていたのかもしれない。
本来なら、家族である私が父さんの苦しみを理解し、軽くしてあげなければならなかったのに。
「私って、かなり親不孝な娘だね……」
自分が情けなくて、紬さんの体にぎゅっと抱きついて、呟いた。
「もっと、父さんに優しくしてあげればよかった。もっと、側にいてあげればよかった」
震える声で繰り返すと、紬さんは私の背中に指を這わせ、額に何度もキスをしてくれた。