冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「こうして瑠依を嫁さんにできたんだから、茅人には感謝しなきゃだな。
まあ、瑠依のおじい様にしてみれば、茅人でも俺でも、瑠依を後継者問題から逃がすことができればそれでOKだったみたいだけど」
「ど、どういう……」
「瑠依が幸せになるのなら、結婚相手は茅人でも俺でも誰でも良かったってことだ。
茅人と俺は、大企業の御曹司という同じ立場にいて、年齢も同じだ。
瑠依を嫁に出すだけなら俺でも茅人でも……一緒だからな。
茅人から俺に結婚相手の候補が変わった時、俺はむかついて必死で瑠依のことを調べた。
俺の人生をどう考えているんだよって怒り狂ったけど、結局は調べているうちに瑠依に惚れて。
茅人に負けないほど情熱的に押し切ったと思うけど、どうだ?」
「どうだって……言われても」
私の頬を撫でながら、何度も軽いキスを落とす紬さんを見つめる。
その瞳の中に、私への愛情と、そして微かな不安を感じる。
それが何を意味するのか、そして、私に何を求めているのか。
相変わらず私の素肌を這う紬さんの手の刺激に意識は持って行かれそうになる。
そんな私に思考能力は残っていなくて。
「私、茅人さんじゃなく、紬さんと結婚できて、良かったと思ってるし、結婚式だって楽しみにしてる」
囁くような小さな声で、そう答えるだけで精一杯だ。
けれど、私の答えは紬さんが求めていたそのものだったようで、大きな笑顔が返ってきた。
「俺も、瑠依と結婚できて幸せだって、まあ、これだけ強引に進めているんだから気づいてるよな」
ははっと笑って、私の首筋に唇を這わせる。
私の背中に回された手に力が入り、それに応えるように、私も紬さんの首筋に腕を回した。
それが合図になったかのように、私たちはキスを繰り返し、身体を絡ませる。
そして、紬さんいわく。
『瑠依にしかその気になれない』
というほどの激しい欲をぶつけられた。
……ほぼ、一晩中。