冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う





「おじい様?」

「いや、なんでもない。国見は、社長付きの秘書から常務付きの秘書に異動したんだよ。それもあって、彩也子さんの仕事が増えて大変なんだけどな」

「え?どうして急に異動したの?」

驚く私に、おじい様はすっと視線を逸らした。

言えない何かがあったのだろうか。

「国見は、まあ、よくできた秘書だからな。常務だけでなく、あらゆる部署から引く手あまたなんだよ。……これからのことも考えて、異動したんだ」

「そう……。なんだか寂しいけど、仕方ないよね。私の会社でも、異動なんて会社員の宿命だし」

「そうだな……。まあ、寂しいとはいってもこのビルで仕事をしているんだ。会えることもあるさ」

私を励ますようなおじい様の声に、頷いた。

会社員に異動はつきものだとはいっても、おじい様と国見さんの関係は長く、私がおじい様のもとで暮らし始めた時には既に第一秘書として敏腕ぶりを発揮していたのに。

今、何がきっかけで常務秘書へと変わったのか、しっくりとこない。



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