冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う





私にも優しい言葉をかけてくれ、誕生日やクリスマスには欠かさずプレゼントを用意してくれた。

成人式のお祝いだと言って、私の生まれ年のワインを贈ってくれたのも国見さん。

仕事に関しては一切の妥協を許さず厳しい表情を崩すこともなかったけれど、私には柔らかく接し成長を見守ってくれた。

独身で子供がいないせいか、まるで自分の娘のように。

「そっか、これからは、国見さんになかなか会えなくなるんだね」

ふっと小さくため息を吐き、おじい様に笑って見せると、おじい様は悲しげに頷いた。

それがどこか痛々しく気になったけれど、中村さんが困ったように「社長、お時間が……」と呟き、それ以上何も聞くことはできなかった。

国見さんが社長付きから離れたあと、古くからの秘書である彩也子さん一人では仕事を処理することが難しくなり、人事部から中村さんが呼ばれたらしい。

私の予想通り、まだ新入社員という若さの中村さんが彩也子さんのサポートとして頑張っているらしいけれど、彼女もまだまだ勉強しなければならない。

国見さんが異動するにしても、中村さんを一人前に育て上げてからではだめだったのかな。



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