冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「私だって、紬さんのことを、愛しているから、安心して」
その不安を取り払うように、ゆっくりと呟いた。
途端、紬さんの口元がふにゃりと緩み、ほっとしたような吐息。
「愛しているから、紬さんと結婚したの。
無理矢理押し付けられたからじゃない。
今振り返れば、お見合いの日、紬さんが私にキスした時から私はずっと、紬さんのとりこなの」
ふふっと笑い、自分が言った言葉に自分で照れる。
とりこ、なんて言葉、滅多に使わないのに、ポロリと口を突いて出た。
だけど、なんだか、紬さんにはこの先何度でも言ってしまいそうだ。
それほど、私は紬さんにメロメロなんだ。
メロメロって言葉も、言い慣れないけど。
微かに熱を感じる頬を隠すように俯くと、紬さんはそれを許さないように私の顔を更に覗き込み、部屋中に響くような大きな声をあげた。
「俺も、とっくに瑠依のとりこだ」
「そ、そんな大声で言わなくても……だけど、すごく嬉し、ってえ? 紬さんっ?」
突然、紬さんが強い力で私を抱きしめる。
思い全てが込められたような力に、私は息苦しくて何度もむせたけれど、そんなことお構いなしに紬さんは私を離そうとしない。