冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
ベッドがきしみ、身体が勢いよく跳ねる。
揺れる体を紬さんに抱き寄せられ、私の腕は、それが当然のことのように紬さんの体に回る。
視線を合わせ、しばらくじっと見つめ合う。
紬さんの瞳がなんの揺らぎもなく、ただひたすら、私を映している。
胸の奥がぐっと苦しくなって、呼吸すらもどかしくなる。
言いたい。
言いたい。
「愛してる」
「愛してる」
私と紬さんの気持ちが同時に高まり、二人で口にした言葉、それは単純で、且つ最強の言葉だった。
紬さんの指先が、私の頬をゆるゆると撫でる。
くすぐったくて、贅沢な震えが体を満たしていく。
愛されたい人から愛されている、そう信じられることが、どれだけ幸せなことなのか、私はようやく知ることができた。
そして、愛したい人を愛することができる喜びを、感じた。
「告白大会は、これで本当に打ち止めだ」
紬さんは昨夜の熱以上の激しさと「愛している」の言葉で私を攻めたて、幸せの涙を誘った。
それは、結婚式まであと一日となった、柔らかな朝だった。