冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
私が本当に浮気をして他の男のものにでもなったかのように苦しい顔を見せ、呼吸も荒い。
『なめるなよ』
ぎろりと睨みながら向けられる言葉は私を責めるように鋭い。
「瑠依が俺以外の男と……ゆ、ゆるさねえ」
独り言なのか、私に言い聞かせているのかわからない口調に戸惑って助手席に体を預けたままでいると。
突然、紬さんは車を降り、助手席に回ってドアを開けた。
「ちょっ、紬さん、え? ど、どうした……の」
紬さんは私の腕を掴み助手席から引きずり出すと、その胸に勢いよく抱き込んだ。
思いがけない強い力のせいか、紬さんの胸にぶつかった私の顔には痛みが走り顔を歪めた。
そんな私の痛みに気付くことなく、紬さんはぎゅっと私の体を抱きしめたまま、何度か大きく息を吐いた。
「瑠依、俺以外の男を見るんじゃねえぞ。社長になったらかなり忙しくなるし寂しい思いをさせるけど、瑠依の一生は俺の愛情で満たしてやるから、な?」
耳元をくすぐる熱い吐息と共に聞かされたのは、予想もしなかった甘いもの。