冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
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そして。
天気にも恵まれたその日。
私と紬さんの結婚式の日を迎えた。
朝からそわそわし続けていた私だけれど、式の中で、一番震えたのは指輪の交換だった。
紬さんが選んでくれた結婚指輪は、優しいU字型のリングのサイドの一部にミル打ちが施された品のあるデザイン。
鏡面と艶消しのバランスもちょうどいい、素敵なものだった。
結婚式当日まで内緒だと言って、どんなものなのか教えてくれなかったけれど、一目で気に入った。
白無垢姿の私の指に、そっとはめてくれた紬さんの手が震えているのを見て、それまで緊張していた私の気持ちもようやくほぐれた。
式の間ずっと泣いていたおじい様は、紬さんとの結婚を推し進めた張本人だったという事も忘れ、「嫌なことがあればいつでも戻ってきていいんだぞ、じいちゃんは、待ってるぞ」と何度も繰り返していた。
その様子は周囲の涙を誘い、父さんが怪我で式を欠席せざるを得なかった事情も相まって湿っぽい式となってしまった。
とはいえ、紬さんと私の門出を親族一同でお祝いしてくれた、心に残る式となった。
それに、誓詞を読み上げる紬さんの嬉しそうな声が高らかに響きわたった時、いっそう私の心は紬さんに引き付けられ、そして、喜びで体全部が満たされた。
政略結婚という私たちの結婚。
お互いへの愛情を求めるのは二の次で、私を葉月家という大きなしがらみから解放し安全を確保するための結婚。