冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




ただでさえ見た目抜群の紬さんが、きりりとした雰囲気を増す和装で見せる笑顔は無敵で、私の心は何度もとくんと音を立てる。

ホテルの女性従業員の人たちも、ちらちらと紬さんを見ては頬を赤らめていて、私の心は穏やかではない。

紬さんがかなり上等な男だというのはわかってはいるけれど。

私の旦那様なんだからね、と周囲の女性たちみんなに言ってまわりたいほど、決まりすぎている紬さん。

私を大切に思っているとわかる視線を隠すことなく私に向けて、満足げに口元を緩めている。

それが嬉しくて仕方がない。

紬さんのすべてが私のものなんだな……結婚するって、こんなに幸せなことなんだ。

こらえようとしても、にんまりと笑ってしまう自分を抑えることもできない。

「紬さん……」

あまりの幸せに、思わず小さくそう呟いた。

その途端、紬さんはきりっと真面目な表情を浮かべた。

な、なんだろう。

「とりあえず、角隠しは触るのを我慢するけど。今夜は触るなって言われても我慢できないからな」

「え? 何が?」

「白無垢も似合っていて綺麗だけど、俺は早くその中にあるものを触りたい」

「そ、その中って……」

「ん? 瑠依の中の、全部」



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