冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



「な、何をこんな場所で……」

「こんな場所だからだろ? 和装がそんなに色っぽいなんて思わなかったし、触りにくいものだって想像もしてなかったし。あー、早く披露宴も何もかも終わって、二人でいちゃこらしてー」

「……ば、ばか」

さすがに小声だとはいえ、親戚の皆様がそろっている中でそんなことを言う紬さんに慌てた。

二人でいる時にかなりの密着度で甘い言葉と態度を見せられるのには慣れたけれど、こんな場所でまで平気で言ってしまう紬さんに焦る。

「ばかでもなんでもいいんだけどさ。俺、江坂の家に生まれて良かったなあってしみじみ思うんだよな。そうじゃなきゃ、瑠依との見合いの話も来なかったしこうして結婚することもなかったし」

「……うん、そうだね」

「会社を背負っていく人生が嫌だったわけじゃないけど、瑠依を手に入れられる最上級のオプションがついてくるなら、社長のイスなんて喜んで受け入れるし手放さない」

紬さんは、化粧で白く彩られた私の手を気遣うように握りしめ、ふっと息を吐いた。






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