冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「強引、自己中心的、俺様。それに……あ、頑固者っていうのもあるかな。いつも偉そうで何を考えているのかわからないし。……あ、ごめんなさいね」
肩をすくめた彼女は綺麗な顔を崩すと、何かを思い出したようににやりとした。
紬さんと親しいのだろうか、あまりにもひどい言いように驚くけれど、そのどれもが私にも納得できるもの。
紬さんとは一度しか会ったことがないとはいえ、彼に対する印象は今並べられた言葉そのものだ。
「せっかく江坂くんに会いに来てくれたのに、妙なことを言っちゃったかしら。
葉月さんにとって、江坂くんは素敵な王子様だったりする?」
「いえ、やっぱり俺様なんだと思ってびっくりしました」
「ふふっ。でしょ?江坂くんのことを聞かれたら、ほとんどの人が近い言葉を言うと思うわよ。綺麗な見た目を裏切る腹黒い男だよね。同期の私はもう慣れちゃったけど、付き合いの浅い人は驚くかもね」
そう言って、ちょうど開いていたエレベーターに乗り込むと、彼女は相変わらずくすくす笑いながら私を見ている。
見ているというよりも、じっくりと私をなめるように視線を上下させる彼女に戸惑い、エレベーターの中だというのに距離を取るように後ずさった。
「ご、ごめんなさい。別に悪気はないんだけどね、あの江坂くんが朝からそわそわしている原因があなただと思うと面白くて」
「お、面白い……?」