冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「いやあ、嘘だといいんだけど、本気も本気でおじい様は言っているらしいよ。
愛しい孫である葉月さんの将来を気にかけて、人生の何もかもを整えてくれるなんて本当にいいおじい様で羨ましいよ。
わが社に入社したのもおじい様の口利きがあったからなんだろうね。
人事部はそれを公にしていないようだけど、そりゃそんな事、まさか言えないよね」
一旦口にすると、どこまでも私に対する嫉妬にも似た面倒くさい感情は抑えられないようで、明るい声ながらも、私を攻撃する言葉が続く。
普段は穏やかに部下との関係を築き、その本心を敢えて表に出すことすらしない人なのに、よっぽど私の事が気にくわないのだろう。
「恵まれた環境に生まれると、楽な人生を送ることができるんだね。羨ましいよ」
私の身内が誰であるのかを知り、これまでとはまるで別人のような言葉が続き、心が痛い。
これまでも、近田部長の事はそれほど好きではなかった。
仕事に対する姿勢を見習おうと感じたこともなかったけれど。
やっぱり、自分を見下され、否定されるような言葉でばっさりと切られると、思いのほか傷つくと感じた。