冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




「そう。会社では滅多に表情を崩さない男が『今日、残業はしないから』なんて言って朝から顔を緩ませているのよ。あまりにもレアな顔だったから、こっそり隠し撮りしちゃったわよ」

「隠し撮り……」

「あ、葉月さんにもあとでデータを送ってあげましょうか?」

「は、はい……」

「じゃ、後でアドレス教えてね。でも江坂くんには内緒にしてね、あー見えて照れ屋さんだと思うんだよね。女の子からの人気が高いだけに、それを警戒して感情を表に出さないようにしているみたいだけど」

紬さんのことを話す彼女の表情から、よっぽど紬さんとは仲がいいのだろうとわかる。

強引だの俺様だの言いながら、結局は紬さんのことが好きだともわかる。

この間のお見合いに飛び込んできた女性とはまた違って、それほど派手ではないけれど頭が良さそうな清楚な女性。

長身で華奢、色白美人だ。

紬さんと同期らしいけれど、彼女から私への敵意も何も感じられない。

私が紬さんのお見合い相手だということを聞いていないのだろうか?

それに、どうしてわざわざ彼女がロビーまで私を迎えに来てくれたのか。


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