冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
紬さんが女性に人気があるだろうということは既に想像していたけれど、まさか紬さんの事が好きな彼女が敵の顔を見にきた?
この場合、敵って私のことだけど。
といっても、やっぱり彼女の様子からはそんな荒々しい雰囲気はまったく感じられない。
彼女の横顔をちらりと見ながらあれこれ考えていると、そんな私の心を察したのか彼女は柔らかい声で振り向いた。
「心配しなくても、私は、っていうよりも江坂くんの同期はみんな彼に恋愛感情はもっていないわよ。恋愛感情を持つ以前に彼が腹黒い男前だってわかっているから、今更、無理無理。
……あ、何度もごめんなさい。葉月さんは江坂くんと結婚する予定なのよね。先入観を与えることばかり言っちゃって、ごめんなさい。
でも、江坂くん……愛する女は自分の懐に入れてめいっぱい可愛がると思うから、せいぜい愛されてね」
「あ、愛されてね、なんて言われても……、私はまだ結婚すると決めたわけじゃ」
「あらそうなの?まあ、次期社長婦人なんて面倒だもんね。
躊躇するのもわかるけど、江坂くんのあの様子じゃ簡単には葉月さんのことを諦めないと思うんだよねー」