冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
どこか少年ぽさを感じさせるその表情は、時々見せられる紬さんの表情とよく似ている。
やっぱり親子だな。
ふたりの会話をぼんやり聞いていた私はふとそんなことに気付いて、小さく笑った。
テンポよく話す二人の呼吸はかなり合っていて、聞いていて楽しい。
それに、結局はお母さんを含めて、紬さんの家族は仲がいいと感じる。
そんな温かな家族関係に縁がない私は、二人が羨ましくて仕方がない。
喧嘩するほど仲がいいっていうし、きっとこの二人もそうに違いない。
そうでなければ紬さんが社長職を継ごうとは思わないだろうし。
少しだけ気持ちが軽くなった私は、表情を元に戻して平然とした顔を作った。
少し余裕も出てきたのか、お父さんが指さしている先にある紬さんに視線を移すと同時に聞こえてきた言葉は。
「ばかじゃねえの?」
投げ捨てるような低い声と指先の震えを感じて、更に怒っているとわかる。