冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「お袋と親父のいつまでたっても高校生の恋人同士みたいな純情ぶった空気感には迷惑してるんだよ。俺は、小さな頃から二人に声をかけるのもためらうほどだったんだぞ。だから、これからは親父とお袋が俺達に気を遣え」
「そんなこと言うなよー。気も遣うしお金も使ってやるから、仲良く……」
「無理、絶対に嫌だ。ということで、俺と瑠依は出かけるからついてくるなよ。
もし邪魔するなら俺らの結婚式には呼ばないからな。じゃ、行くぞ」
いきなりそう言い捨てた紬さんは、泣きそうな顔をして私を見るお父さんを無視したまま私の肩を抱いた。
そして、くるりと背を向けると、驚く私に構う事無くそのまま社長室を出る。
「ちょ、紬さん、お父さん泣きそうな顔してるし、親にあんなひどい言い方するなんて、だめじゃない」
引きずられるように歩いている私は、あまりにも強引な紬さんに慌ててそう声をかけた。
すると、紬さんは社長室のドアを閉める直前に立ち止まり、チッと舌打ちをしたかと思うと。
「俺らの邪魔をせずにおとなしくしていたら、結婚式で瑠依と二人の写真を撮ってやる。当日まで体調には気を付けろよ。あ、披露宴の挨拶で緊張のあまり泣くなよ?それこそ母さんにばかにされるぞ」
お父さんをなだめるような言葉を残し、バタンとドアをしめた。