冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
やっぱり私も簡単な女なんだと実感して小さく息を吐いた。
見た目が好みの男から結婚を申し込まれ、そして甘い言葉を囁かれておちないわけがない。
だめだだめだと思いながらも、気持ちは徐々に紬さんに傾いていく。
単なる政略結婚なのに……愛なんてないのに……。
この結婚を拒む理由なら幾つも言えるし、今、紬さんから離れれば、彼を忘れられる自信もあるけれど、その一方では離れたくないと思う自分もいてどうしようもない。
私って、ほだされやすくてこんなに弱かったんだ。
落ち込みながら紬さんの胸に頬を押し付けると、私の気持ちとは真逆の軽やかな声が耳元に落とされた。