冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
本当、男前だな。
私を見つめながら不安げに口元を引き締める紬さん、この人の子供って、かわいいだろうな。
強引な性格を受け継いだら、それはそれで素敵かも。
「瑠依、どうしたんだ?」
ぼんやりと考え込んでいると、紬さんが私の頬を手の甲でするりと撫でた。
その熱をずっと感じていたいなあと、切なくなる。
「ううん。男のくせに整いすぎた、むかつく顔だなあと思って見てるだけ」
「な、なんだよそれ」
「ふふっ。見た目抜群、将来は社長。大変なことも多いだろうけど、それなりに裕福な暮らしはできるし。まあ、その強引すぎる性格が好みだっていう女の子は多いし。むかつくくらい、条件がそろった男だね」
「条件って……。確かに。それだけで俺に近づく女は多かったから、人を見る目はあると思う。それも俺の魅力かな」
肩をすくめてそう呟いた紬さんは、私の肩を抱き寄せて歩き出す。
相変わらず混み合う通りの真ん中を、楽しげに。
「で?そんな無敵の俺と結婚できる自分は幸せだって実感しているってことか?」
紬さんは肩をすくめて笑顔を見せた。
私は、きゅっと苦しくなる気持ちに気づかない振りをして、紬さんに負けないほどの明るい声で答えた。
「無敵の男なんて私には向いてないから、私は紬さんとは結婚しない。たとえおじい様が泣いても構わない」