冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「瑠依、何を食べるんだ?ほっけでいいのか?」
「え、ああ、そうだね、ほっけ定食にする」
「ビールは?」
「どうしようかなあ、やっぱり飲んでおこうかな……」
「どうするんだよ」
ふうっと小さなため息と呆れた声が聞こえて、紬さんに視線を戻した。
すると、紬さんの傍らには注文をとりにきた女の子が立っていた。
ショートカットが良く似合う長身の女性で、細く長い足にフィットしたジーンズが彼女のスタイルの良さを際立たせていた。
薄い水色のエプロンが彼女によく似合っていて、同じ色の三角巾をしていても決して彼女を野暮ったく見せない。
玉子型の綺麗な顔はとても小さくて、三角巾がやけに大きく見える。
こじんまりとした定食屋さんにはしっくりこない彼女の姿。
彼女は日里さんといって、紬さんの大学時代からの友達らしい。
「ほっけ定食でいいですね? ご飯は大盛りにできますけどどうしますか?」
形のいい唇から『ほっけ』だの『大盛り』なんて言葉が飛び出して、そのちぐはぐさに小さく笑ってしまう。
その流れにつられ、そして空腹感には逆らえず。
「大盛りでおねがいします」
力強い口調でそう言った。