冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「付け合せのスパゲティのウインナーも多めにしてくれよ」
「了解了解。お子ちゃまにはちゃんとウインナーが多めの特別定食にしてあげるわよ。いつもみたいにね」
いつもみたいに……?
さっき、紬さんの会社では中津さんからハンバーグが好きだと聞いたけど、どれをとっても子供が好きそうなメニューばかりだ。
紬さん自身、そのことを照れくさく感じていても、結局注文せずにはいられないらしい。
好きなものには素直になれるんだな。
大きな会社の次期社長。
そして強気で余裕ばかりを見せている男前。
身に着けている物はどれも一流だけど、好きな食べ物はお子様仕様。
ほんのり顔を赤くしながらもそれを注文するなんて、よっぽど好きで仕方がないんだな。
そんな紬さんと日里さんが仲良く掛け合いをしている様子を見ていると、ふと私に視線を移した紬さんが呟いた。
「ビーフシチューとエビフライも好きだから、練習しておけよ」
「え?」
「だから、俺の好物を作れるように練習しておけって言ってるんだ。結婚したら、まずはハンバーグだけどな」
「あーあ。いきなり亭主関白だね」
「ああ、悪いか?」