冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




口では紬さんをからかうようなことばかりを言っているけれど、その嬉しそうな表情を見れば二人の仲の良さがわかる。

紬さんだって、文句を言いつつも本気で怒っているようには見えないし。

日里さんといい茅人さんといい、紬さんが心を開いている大切な人のように思えて羨ましくなる。

「で?結婚式には呼んでくれよ?」

紬さんの背に隠されている私を覗き込むように茅人さんがそう言った。

にやりと笑った表情は、さっきまで私に根掘り葉掘り聞いていた時の日里さんの表情と似ていた。

夫婦ってやっぱり似てくるんだな、と思いつつ、茅人さんの言葉にどう答えていいのかわからず。

ちらりと紬さんを見上げた。

愛されているのかどうかわからないままで簡単に結婚できないと、この場で言っていいんだろうか。

私一人が紬さんに好意を持ったまま話を進めてもいいとも思えないし、紬さんが私を好きだと言ってくれたことにも不安が残っている。

堂々巡りだな……。

紬さんは、そんな私の心の葛藤なんて大したことのないように肩をすくめた。

「瑠依って、ほんと頑固だよな。好きだって何度言っても信用しないし。まあ、人生は長いから、時間をかけて嫌っていうほどわからせてやる」

紬さんは、背後にいる私に自信に満ちた声で言い切ると、思い出したように再び茅人さんに視線を向けた。

「結婚式の準備は両家のじいさんばあさんが進めているから、茅人にもそのうち招待状が届くと思う。三カ月後だったかな。日里と一緒に来てくれ」

「さ、三か月後……?」



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