冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「心配しなくても大丈夫だ。俺が瑠依を幸せにしてやるから」
目の前にいる茅人さんの存在に構うことなく囁かれたその言葉に、私は体中が熱くなるのを感じながら俯いた。
すると、そんな私たちのこっぱずかしすぎる姿を見ながら、茅人さんは何故か。
「良かったよ……安心した」
それまで紬さんをからかっているばかりだった表情を、真面目なものに一変させ、大きく息を吐いた。
「瑠依ちゃんには、初めから紬だったんだね……俺じゃなかったってことだ」
紬さんの胸に押し付けられている私は、嬉しそうに空を見上げる茅人さんを、横目でちらりと見るしかできなかった。