やさしい手のひら・後編
新くんの後ろに付いて行く。背中で前が見えない。ベットの方をどうしても見れなくてずっと下を見ていた

「亜・・・美」

由里の声が聞こえ顔を上げると・・・

嫌・・・嘘・・嘘だよ

「凌・・・」

ベットに横になっている凌がいる

あんなにきれいだった顔が傷だらけで、まだ血が少し付いている

そして目を瞑って口には酸素マスク。体からたくさん線が出ていて機械が凌の管理をしている

私は今、何を見ているのだろう

どうして凌がここで眠っているのか、またわからなくなる

少しずつベットに近寄る

手も足もどこも動かない

「凌・・・凌!」

私は凌の右手を握る

「こんなに温かいのにどこが危篤なのよ・・・」

涙が頬を伝う

「凌・・・目を開けて・・・お願い・・・起きてよ・・・」

新くんが私の後ろに来て、しゃがんでいる私を立たせてくれて

「しっかりしろ・・・」

「だって、だって・・・どうして凌が・・・凌が・・・嫌だ。嫌だよ」

私は新くんに飛びつき、新くんの胸で泣いていた

「亜美・・・」

由里は目も鼻も真っ赤で、きっと今までずっと泣いていたんだ

「本郷ね・・・小さい子供が道路に飛び出して・・・それを助けようとして・・」

由里もそこまで言うとまた泣き出してしまった

きっと咄嗟に子供を助けたい、と思って凌は飛び出したんだろう

それが凌の優しさ・・・

「凌、どうして・・・どうして」

「あの・・・」

新くんの胸から顔を離し、呼ばれた方を見た




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