やさしい手のひら・後編
私ぐらいの女の子で背が小さくて、きれいというよりかわいいという感じの女の子が私に話し掛けて来た

「亜美さん・・・ですよね?」

私が小さく頷くと

「凌の彼女だよ」

横にいた坂下が私にそう言った

「凌くんから亜美さんのこと聞いてます」

この子も目が真っ赤で瞼が腫れていた

私は凌の彼女から目線をベットにいる凌に移した

由里と凌で飲みに行った時、凌に彼女が出来たことを由里から聞いたことを思い出す

凌・・・あなたは大事な人を残して死のうとしているの?

私は心の中で囁いていた

私の初恋の凌。好きで好きでどうしようもなくって、海で告白された日のことがこの間の出来事のように思い出す

何をするのもお互い初めてで、泣いたり、笑ったり、怒ったり・・・凌との思い出はたくさんありすぎる

私が流産した時、暗闇から救ってくれたのは凌だよ

私、まだ何一つ、恩返しをしていない

それなのに先に死んじゃうなんて・・・

絶対許さない・・・

シーンとした病室で機械の音だけが鳴っている

今、凌は何を考えているの?

こんなにみんな心配してるよ

早くここに戻っておいでよ・・・



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