やさしい手のひら・後編
凌が首を動かし部屋の隅々を見渡し、新くんを見た

そして二人は目が合い

「亜美の・・・?」

「あ・・・うん」

私が答えると

「川崎さんとは・・・」

「凌、今はいいから」

私は今ここで健太の名前を出してほしくなくて、つい話の途中に口を出してしまった

「凌、今日はもうゆっくり休んだ方がいいよ。私達も帰るから」

「・・・」

凌は何も言わずただ天井を見ていた

そして

「唯、悪いんだけどちょっと廊下に出てて」

「うん。わかったよ」

唯ちゃんは言われた通りに廊下へ出て行く。でもその後姿が悲しそうで見ていられない

「本郷そんな言い方ってないよ」

由里も私と同じ思いだったのか凌に言うと

「聞いたらもっと嫌な思いをさせるから」

そう凌は答えた

私でもなく、由里でもなく、もちろん坂下でもなく、凌は新くんの方を向き真剣な顔で

「亜美と別れてくれませんか」

凌はそう言ったんだ


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