やさしい手のひら・後編
「この先のことなんて誰もわからないんだから、急がないで前に進もうよ」

由里はそう言って、凌を納得させた

「でも最後に決めるのは亜美だからね」

そう、私がちゃんとはっきり決めなくちゃいけない

凌が回復するまで返事はしたくないと思っていた

「凌、私達帰るね…」

私が凌に言うと

「ごめん。驚かせて…」

「ううん。大事にしてね」

「あぁ」

後ろ髪を引かれる思いで私と新くんは病室を出た

横目で新くんを見ると不機嫌そうな顔で前を見ていた

私が凌にはっきり新くんのことを好きだと言わなかったことにきっと怒っている

でもあんな状態の凌にはっきりなんて言えなかった

それともはっきり言えばよかったのか…

車に乗り、新くんが

「あの場ではっきりしなかったのはあいつが病人だからだよな?」

私の思っていたことを新くんは気付いてくれた

「ごめん…凌の怪我を考えたら言えなかった…」

「それでいいんじゃね?」

「え?」

「意識戻ったばかりの奴にはっきりなんて言えないだろ。言ってたらお前のこと軽蔑したかもな」

怒っていたんじゃない、ということにホッとしていた



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