やさしい手のひら・後編
「お願い、亜美ちゃん。凌の傍にいてあげて・・・。少しでも凌の気持ちを楽にしてあげて・・・凌には亜美ちゃんが必要なの・・・」

お母さん・・・

凌がこんなことになるなんて・・・

このことを凌はまだ知らないの?私、どんな顔で凌に会えばいいの?

今まで歩いていた人間が突然歩けなくなるということは、精神的にも肉体的にもこの先、苦労が多いはず

そんな苦痛に凌は耐えられのか・・・

それを考えると凌を支える人が絶対に必要

でもそれが私なのか唯ちゃんなのか、私にはわからない

「あの・・・凌はこのことを・・・」

「何も知らないわ・・・。リハビリで治ると思っている・・・。だって言えないでしょ、歩けないのよ、なんて・・・」

「でも右足は・・・」

「今はまだ動かないけどこれからのリハビリで多少は動くかもしれない。でもそれは今はまだ判断できないって・・・。左足はもう何をしても動くことはないって・・・」

我慢していたのに涙が込み上げてくる

命が助かったのに次はこんな残酷な告知があるなんて・・・

「私にできることがあるなら凌の力になりたいです」

私は涙を拭き、凌のお母さんの目を見て言った

「凌は・・・ずっと亜美ちゃんのことが好きで、自分が昔犯してしまったことをとても後悔していたわ。失って亜美ちゃんの大切さを知ったって・・・」

凌・・・

「だから亜美ちゃんが幸せならそれでいいって。私、男らしくないって言ったら、亜美は笑ってた方がいいからって・・・」

凌・・・いつもそうやって私のことを見守ってくれていたんだね・・・



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