やさしい手のひら・後編
「今はまだ足のこと、凌に言わないでいてね」

「はい。私からは・・・言えません」

「いつか気付くと思うけど、今はやっぱり黙っていたいの・・・」

涙を流すお母さんに

「一緒に頑張りましょう」

私はそう言っていた

少しでも凌の力になりたい・・・そう思ったんだ

「私、落ち着いたら部屋に行くから先に亜美ちゃん行ってあげて。凌、とても喜ぶと思うわ」

「はい。じゃあ、先に行ってます」

廊下を歩いていると車椅子の人とすれ違った

もし・・・凌が車椅子の生活になったら・・・

悪いことを考えてしまい、首をブルブルと横に振り

「大丈夫、右足は治る」

そう思い、ドアを開けた

「凌」

「おぉ」

昔から変わらない笑顔。その笑顔に鼻の奥がツーンとなり痛くなる

それを押し殺し

「どう?調子は?」

「危篤が嘘みたいだよ」

鼻で笑う凌に

「生きててよかった」

私は凌の顔をちゃんと見て言った

「俺もそう思う。また亜美に会えたから」

そう言った凌は私の左手を掴み、強く握り締めた

凌の手は温かく、生きてるよっていう温度が伝わってくる

やっぱり生きているっていうことは素晴らしい

どんなに辛くても苦しくても生きているから味わえることで、死んでしまったらこんな気持ちにはならない

「ほら手入れて」

私は凌の手を布団の中に戻し、バックを置き椅子に座った



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