やさしい手のひら・後編
「どうしたの?どこか痛い?」

「いや・・・」

「何?どうしたの?」

「俺のこと・・・憎んでるか?」

「えっ・・・?」

凌は目を窓の方に向けた

だから横顔しか私には見えない

「憎んでないよ。憎む理由なんてないでしょ」

凌は窓際を見たまま

「まだガキだった自分のしたことが許せないんだ」

凌・・・そんな昔のことを今でも背負い込んでいるの?

「そういうなら・・・私は凌を裏切って・・・健太と・・・」

「もう一度、亜美とやり直したい。昔みたいに二人で笑いたいんだ・・・」

今ここで私が拒否したら、これからの試練を凌一人で立ち向かっていかなければならない・・・

私は拒否できるのか・・・

それに唯ちゃんだっている

私は一体どうしたいのか、どうすればいいのか、言葉が出てこなかった

「唯とは・・・別れるつもりでいたんだ・・・。それを言いに行く途中の事故だった」

「そんな・・・」

「俺は誰と付き合っても本気になれない。唯と付き合ってそれがよくわかった」

「でも、唯ちゃんは凌のこと・・・」

「わかってる。でも・・・だめなんだ」

凌が苦しそうにもがいている。唯ちゃんに対しての気持ちがないと凌は言う

でもそんな唯ちゃんの思いを断ち切ってしまっていいのか・・・

「凌・・・凌には唯ちゃんみたいな人が・・・」

「だから俺は唯じゃなくて亜美が・・・」

ガタン

誰?

私は音が聞こえた廊下へ行こうとドアを開けると・・・

「唯・・・ちゃん」

唯ちゃんが涙を流して立っていた




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