やさしい手のひら・後編
「帰る?」

エレベーターに向かいながら由里が言った

「亜美はどうする?」

「・・・」

「おい、亜美」

「あっ・・・うん?何?」

「話し聞いてないだろ」

フッとため息交じりに凌が笑った

懐かしい笑い方。この笑い方も学生の頃から変わっていないね

「帰るのかって?」

「私はどっちでもいいよ」

「佐藤は?」

「亜美の家行きたい!」

「うん。いいよ」

エレベーターのドアが開き、私は足元を見ながら乗った

この匂い・・・健太の匂いと同じ

私はゆっくり顔を上げると・・・

嘘・・・健太・・・

私も健太もお互い目が合った

でも私は目を逸らしてしまった

だって健太の隣には健太と手を繋いでいる佐原樹里がいたから・・・

残酷な光景だった・・・
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