やさしい手のひら・後編
「俺は幸せだった」

「えっ・・・?」

「好きな女と初めてを分かち合えたから」

凌・・・

私の涙腺が緩みだしてくる

私は思い出を大事にしてくれている人を捨ててしまった・・・

「なんで泣く?」

鼻を啜る私に凌は手を出し涙を拭ってくれる

「自分のしてきたことが・・・」

「亜美は悪くねぇよ」

優しい瞳で私を見つめる凌はずっと変わらない笑顔だった

変わってしまったの私なのかもれしない・・・

「亜美・・・」

ベットに座っている凌が首を傾げて私を覗き込む

「俺ら幸せだったよな?」

切なそうに凌が言った

「幸せだったよ」

だから私は笑ってそう答えた

この言葉に嘘も偽りもない

本当に幸せだったから・・・

「そう思ってくれるだけで俺・・・なんか生きててよかったって思える」

「凌は・・・ちゃんと生きてるよ」

「もう泣くなって」

大きな手で私の頭を撫でる凌

そんなひと時が昔を思い出させていた。私はどこでどう間違ってしまったのだろう

凌とずっと一緒にいたら、健太との苦しい恋をしなくて済んだのだろうか・・・

それともやっぱり健太と付き合っていたのだろうか・・・

私の気持ちが、暗闇の中を彷徨い始めていた

私は光のある道へ抜け出せるのだろうか・・・



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